違法アップロードと価格の違い

VHSビデオの時代から、DVD、BDへとAVソフトも変化した。

最初に言ってしまうと、日本のブルーレイ・ディスクは高すぎると思う。
生産ラインの問題で言えば、普及が進めば、単価も下がるのが普通だが、まだまだ国内盤の価格はステイツに比べて高い。

英語圏の国に販売するのと、日本人しか買わない国内盤では、販売数の桁が違うから、価格が落ちないのも仕方が無いのかもしれないが、字幕も吹き替えも必要としない人は、迷わず海外版を買うのが普通だろう。
ソフト化も早いし、値段も半値、リージョンコードもステイツ版なら、まず問題は無い。

ところで、BDで一番売れ行きが伸びているのは、実は日本のアニメ作品である。
映画のシェアを上回る勢いで年々成長しており、BD生産の牽引役として世界で愛されている。
海外には、日本のアニメを吹き替える声優の仕事に就きたい人が増加しており、実力では日本の声優に匹敵する演技力を持つ人も少なくない。

こうした背景には、俗にジャパニメーションと呼ばれる日本特有のアニメ制作が、世界に受け入れられるだけの実力を認められたということであり、数々の名スタッフによる研鑽と熱意の結晶とも言える。
もう一つは、違法アップロードの温床として、シェアやアップロードサイトで日本のアニメが圧倒的に増加した点にある。
海外のアニメファンにしてみれば、視聴できる環境が広がったことで、より日本のアニメを知る機会が増え、放送の翌日には字幕付きで公開されるなど、権利者にしてみれば卒倒ものの勢いだった。
こうした日本アニメを愛する外国人の増加に伴って、溢れ出した勢いは監視対象に成り易い共有動画サイトに流れたため、違法アップロードを社会的に認知させる結果となり、一つの社会現象にまでなってしまった。

こうした状況を改善するため、ステイツで始まった日本のTV局や制作会社との契約による月額課金ネット放送は大人気となり、ほとんどのアニメを新作は3日追加課金、放送から一週間を経過した作品は月会費で見放題というシステムも好評で、ステイツ向けの違法アップロードは激減した。
高画質で、安価な会費で、合法的に、しかもリアルタイムで観れるのだから、当然の結果と言える。
また、海外声優による吹き替えも順次行われており、日本と似たような声優ファン層も生まれている。

ところが、現在の海外サーバーにアップされる動画は、日本人が自国のアニメを日本人に観せるために行なっている、という奇妙な事態になっている。
日本でも、合法的にネットで視聴する方法は存在するが、TVアニメは無料という意識が先行しているため、地方局で不遇な目にあっているファンは、有料サイトを利用したがらない。
そこで、奇特な人がエンコードし、地方住民のために動画をアップするのだが、彼らも犯罪者に成りたくはないので、海外のサーバーを使用して、寄生サイトと呼ばれるプレイヤー付サイトにURLを張ることで、日本人が日本のTVアニメを観ている。

この事態に反発したステイツの大手サイトでは、日本からのアクセスの制限や拒否を実行、管理者による会合を開き、大容量のファイルを日本からアップロード出来ないようにするための対策を進めている。
理由は、アクセス集中によるサーバーへの被害と日本よりも遥かに厳しい著作権侵害への恐怖、FBIによる摘発の増加が挙げられる。
ステイツでは、違法動画を上げた人間も、削除に対応しなかったサイト管理者も同様に逮捕され、刑事罰と損害賠償の被告になってしまう。
上記のように安価で合法的に視聴できる環境を手に入れた海外ファンやサイトにしてみれば、日本からの著作権物の違法アップロードは迷惑以外の何物でもない。
すでに、大小数十のサイトが逮捕・閉鎖・改善指導を受けており、動画共有サイトは、自動検索・削除・アップ者のデータログの収集を行うボットプログラムを導入し、その記録をFBIや要請のあった権利者、警察に提出することを義務づけられている。

こうした状況の変化を知らない人間は、拒否されるたびに他のサイトを探し、対応が間に合わない小規模や個人の共有サイトにまでアップロードを続けている。
ステイツは自国のインターネット環境を保護する名目で、日本の警視庁サイバー課に監視の強化と情報の共有を取り付け、日本からの違法アップロードの防止と違反者の捜査・逮捕を強く申し入れている。
これには、ステイツで販売しているジャパニメーションのソフト販売業界の権利保護も影響しているため、販売権利者の損害賠償が日本に及ぶ可能性も示唆している。
この申し入れの矛先は政府にも及び、アップだけでなくダウンロード視聴を行なった者にも、実刑を伴う罰金制度を法律化する審議を行なっており、早ければ6月までに成立する見込みだ。

市場として無視できない程に拡大したジャパニメーションのディスク販売は、違法アップロード撲滅を目標にしており、これによって安定した出荷数と購入者を獲得できる、というわけだ。

最早、TVアニメは商品であり、放送の地域格差が激しい日本の実情でも、違法視聴の理由にはならない時代になった。
ただ、ステイツでは日本円で300円〜程度の会費で最新作も含めた作品が視聴できるのだが、日本ではネット放送の会費も馬鹿にならないぐらい高いのが事情が違う所だ。

これで、ディスクが売れ、販売単価が下がるのなら、ファンも納得せざるを得ないのだが、中間マージンが嵩む国内市場で、BDがステイツのように半値以下になる見通しは暗い。

金が絡むとステイツも日本も本気になるので、善意のつもりでアップしている人が、前科者の汚名を着るのも気の毒な話ではないだろうか。
損害賠償の金額も・・・、TPPへの参加を余儀なくされる弊害として、一生を棒に振るような額を平気で訴訟してくるステイツの裁判を見れば、この問題も無関係ではない。

私は、利用していないので、どちらに転んでも関係は無いのだが、映画マニアとしてはBDの国内盤価格が下がるのは大歓迎。
海外通販は送料が高いので、ある程度まとめ買いをしなくてはならないし、やはり難解な会話が多いジャンルの作品をヒアリングだけで楽しむのは辛い。
そういえば、日本アニメのBOXなども、海外版は安いのだが、これなら字幕を消せば日本語で視聴できるし、スタッフロールが英語表記でも構わないのなら、利用してみるのも手ではないか、と思う。
少なくとも、逮捕される危険を犯すよりは、現実的な気がする。


それにしても、インターネットの世界も世知辛くなったもんである。