深刻

以前に放射性物質遮断シートの購入に協力した方から、思いがけず連絡があった。
【もう、限界です】
その声には、深刻な暗さがあった。

気休め程度かもしれないが、シートは役に立っています、との事だったが、毎日のように【自然の全てから放射線が向かってくる】というストレスに押し潰されそうだという。
現に測定装置を持参して歩くと、自然の濃い場所ほど線量が高く、子供が通う学校の除染も一度きりで、換気口や風が吹き貯まる箇所からも高い数値が出て、通学路も危険なため、毎日自家用車で送り届けているそうだ。

国や県の除染実験も多様な状況に対応できず、膨大な費用が掛かる上に、汚染物質の置き場所も二転三転して決められない。
仮置き場→中間貯蔵所→最終処理場という流れも、仮置き場ですら県内の候補地の住民が拒絶し、結果として除染は進んでいない。

気の毒なのは、警戒区域の線引きの隣の市町村で、いっそ立ち退き費用を出して貰えれば選択肢になるが、仮設住宅の提供だけでは、家族揃ってストレスの多い生活を強いられるだけだ。
仕事も原発頼りだっただけに、失業しても勤め先は皆無で、除染の仕事を得られても、規定の放射線量に達すれば1年は再就職できない。
【自殺する人も増えている】

あらゆる面で矛盾が生じており、1年半を経過しても普通の生活は程遠く、第一次産業従事者は風評被害と実被害の狭間で、まともに仕事をする事も出来ない。
除染は進まない、仕事はない、国の支援も杓子定規で、子供の健康も心配、と空恐ろしいことだろう。

私は、原発村の住人が事故にあったのは、それだけのリスクを知りながら、優遇措置を受けてきたのだから、余り同情しない。
こうなる危険を無視したか、自分たちは安全な御用学者の口車に乗せられたのだから、最後まで誘致に反対した人以外は仕方がない。
【子供のためにも、他所に引っ越せば良いと言われる】

ちらちらと甲状腺癌の話も広がり、実際に初期症状になった子供もいると聞くと、決断するべきなのか、気が気ではないという。

私に言える事は、ほとんど無い。
東電の引き伸ばしには腹が立つが、除染費用も含めた賠償の日を我慢強く待つか、健康のリスクを承知で働くか、出来る限りの防御策を講じて生活するか、いずれも辛い決断である。

風評被害だ、と叫ぶ人、実際はもっと酷いと苦しむ人、低所得者層や高齢者は自殺していくと嘆く人、そしてどうやって子供を守ればいいのか、と目を伏せる人・・・。

どれも真実なのだろうし、皆がストレスをつのらせているのだろう。

私が関わった人は、故郷を捨てる線で思い悩んでいるという。

やはり、この国に原発は無理だった。