憧れ

若い頃は、歴史上の英雄や偉人に憧れ、自分もそうありたいと想うものだ。
目標を持つのは良いことだし、それが励みになるのなら、決して悪いことではない。

私も歴史を好むので、若い頃は蒲生氏郷尼子経久の伝記を読んで、男の哀愁を感じた。
どちらかというとマイナーな人物が好きで、鳥居元忠と共に捨て石になるべく伏見城に散った内藤家長など、かなり痺れる。
男の人生には、因果があり、人それぞれの生き方に相応しい死に方が待っている。
意地を通せば、末期の所作も、自ずと決まっているものだ。

10代の憧れが失速しても、40代には自分の人生の味わいを知り、はにかむ気持ちも出てくる。
歴史に残らなくても、自分が生きたことを受け入れ、味わえるようになれば、これもまた乙なことだろう。

なに、40から変わることもあるし、学ぶこともある。
これからの人生より、これまでの人生の方が長くなってきても、恥を知る心を忘れなければ、経験から生まれる喜びもあるだろう。

自分の寿命を知る術は無いが、意地を張れるまでは、生きる価値を感じる。