高所恐怖症

私は、幼少時に何度も木や崖から落ちたので、めでたく高所恐怖症を患っている。
物心が付いたら、足場の悪い高所で動くのが、どれだけ危険なことか、ようやく理解したからである。

と、いうわけで、人類史上最も無意味な行為だと思うのが、バンジージャンプだ。
足にゴム紐を結んで落下する行為が、成人の儀式だとかいう地域に生まれなくて本当に良かった。
そんな生まれだったら、大人になんてなりたくない、と物理的な意味で反抗していたことだろう。

皮肉屋の選考会であるダーウィン賞は、世界で愚かな行為により死亡する、もしくは生殖能力を無くすことによって自らの劣った遺伝子を抹消し、人類の進化に貢献した人に贈られる賞だ。
人の死を茶化すというのは、ブラックであり、余り褒められた趣味ではないが、倫理観を超えた笑いがあるのも事実である。

1997年、エリックくん(22)は、地上までの距離を測り、橋の上からバンジージャンプを敢行し、死亡した。
現場を見た警官は、後にこう語っている。
【彼はゴムは伸びるということを知るべきだった】

1997年最優秀賞の事件だが、ダーウィン賞選考委員は
【人間は誰でも飛ぼうと思えば空を飛べる。しかし、残念ながら一方向にしか飛べない】
との選考評を述べた。

こういう酷い例を出すまでもなく、毎年のように死者や怪我人を出しているバンジーという行為が、如何に危険で無意味か分かって頂けるだろうか。

この世に絶対に安全と呼べるものは存在しない。
ジェットコースターも事故を起こすし、展望台の床が抜ける可能性もある。
ベランダからは落下するし、飛行機も構造的に脆い。
自分の努力や能力では絶対に回避出来ないのが、高所からの落下であり、地べたに叩きつけられれば、数ある死体の中でも群を抜いて酷いことになる。

高所の恐ろしさが分かって貰えたと思うが、それでも私はチキンと呼ばれなければいけないのだろうか。
呼びたければ、呼んでいいよ、もうw