映画と銃とアメリカという国 ①

今から20数年ほど前になりますが、中古レコードとビデオの買い付けにステイツ(アメリカ)に通う仕事をした事があります。

内容は至って簡単で、ニューオリンズデトロイトで主にジャズやソウル系を買いながら、ついでにビートルズストーンズ等の日本人好みのレア物を露店で見つける、というものです。
所謂、赤盤と呼ばれる物ですが、当然のように偽者も多く、ジャケットと中身が違う、という事もしょっちゅうありました。
それでも一回の渡米で300枚は買いますので、収支的には損は無い仕事でした。
仕入れと渡米費用を引いても、充分な利益が委託先には落ちる計算です。

映画に関しては、今のように日本未公開でもDVDは発売されるという時代では無かったので、マニア向けのSFやホラー映画のビデオを入手していました。
役得として、まだ日本で公開していない映画を劇場で楽しんだり、自分のコレクションとして買える楽しみがありました。
向こうでは、ホラー映画は日本のお化け屋敷と良く似た雰囲気で、劇場内は大騒ぎになりますし、カップルはどさくさに紛れて楽しんでいたり、面白くなければブーイングを聞きながらEDクレジットを観ることになります。
静かに観ることがマナーになっている日本とは、かなり事情が異なりますね。
もちろん、真面目な作品や恋愛物では、さすがに大人しく鑑賞するのが当然です。

私はSFとホラー映画に関しては、それなりにマニアだと自負しているのですが、70年代や80年代の作品が、最近になってリメイクされる世情を見ると、9.11以降の映画産業の自粛ムードとネタ切れは深刻だな、と感じます。
まだ、建っていた頃の貿易センターのツインタワーやビル街を知っているだけに、永遠に失われた風景と人命には今でも悲しみを覚えます。

血で血を補うようなテロ国家への攻撃は、アメリカ人の怒りの顕れに見えますが、実のところ戦争がしたい政府の強引な理由付けにしか見えませんでした。
知人の多くはテロ行為に対する怒りは持っていても、それと戦争は別の問題だ、と私に話してくれました。

国家で一括りにすれば、他国の文句を言うのも簡単ですが、個々人の主義や主張は千差万別であり、皆が同じ顔をしている世界など無いのだ、ということを改めて実感したものです。

続く