ゴーストタウン

今、ステイツのミシガン州デトロイト市内は、ゴーストタウンになりつつあるという記事を読んだ。
自動車産業で有名だったデトロイトも、失業率が悪化し、犯罪発生率も全米一になったというのだ。

昔からデトロイト市内はダウンタウンが多く、また賃金労働者が多く住んでいた。
裕福な層は、市を囲む衛星都市に居を構えており、対照的な貧富の差があったのは事実だ。
図式としては、裕福な白人とメキシコ系&黒人系の比率が2:8という典型的な白人支配型の経済活動が行なわれていた。

元々、治安は良い地域では無かったが、失業率が上がるに連れて、若者が働き場所を求めて去った為に人口が減少し、1900年頃からの建造物も、一切の手入れも行なわれないまま廃墟となり、地域によっては完全なゴーストタウンとなった。
こうなると、犯罪者にとっては格好の隠れ場所になり、何十ものマフィア的な組織が幅を利かせる無法地帯と化し、益々治安は悪化する、という悪循環が続いている。

同じゴーストタウンでも、軍事基地や地下核実験場が廃棄されて出来たものとでは、現状も内容もかなり違う。
前者がビル群も含めた街の廃墟であるのに対して、後者は軍事関係者とそれを相手にしていた人々の町で平屋が圧倒的に多い。
規模としては、日本でいえば一つの市クラスの広大な敷地に空き家が並ぶという終末後の世界のような風景を醸し出している。

そのため、ホラーや近未来SFの舞台に持って来いだという理由で、映画関係者がロケを行なう場所にもなっている。
申請書一枚で、これだけ圧倒的な舞台で撮れるのなら、制作費的にも大喜びであろう。

日本も、過疎化が進み廃村になるケースとして、主産業であった鉱物・林業採掘場の閉鎖や単に不便であるという理由で若者が都会に出てしまって人がいなくなるなど、現在の時点で2000以上の集落が放棄されている。
書く言う私の故郷でも、母方の実家が廃村認定され廃棄されている。

都会暮らしをしているとピンと来ないが、所謂日本的な農村風景が、かなりの割合で減少しているともいえる。
民俗学を齧った身としては、特定の集落でのみ伝えられていた文化や風習が消えていくのは寂しいものだが、逆にそれだけ不便な地域に住んでいた人の忍耐力も限界に達していたのだろう。
若者が街に移動すれば、年をとった高齢者が残り、やがて子供の住む地域に呼ばれるか、痴呆や老衰でホームや病院に入り、最後には誰もいなくなった、という流れだと思う。
特に少子高齢社会を迎えた日本の現状では、更に僻地の放棄は進むと考えられる。

こうした状態になると、どこの地域でも同じような生活で平均化し、方言も薄れ、地域文化も忘れられていき、故郷を持たない人も多くなるだろう。

ネットやTVで情報を共有する国民が増えていくと、今にどこの地域も同じような価値観で、物事を考える社会になるかもしれない。
そして、このまま日本人口の減少が続けば、そう遠くない未来に内需は減少し、世代の空洞化のため経済は回らなくなり、有能な人材は日本から外国へと仕事の場を求めて去ってしまう。

ゴーストタウンの足音は、この日本でも確実に聞こえている・・・。