アイデアと絵が与えるインパクト

今週のお題「オススメのマンガ」

私が、初めて漫画に出会ったのは、10歳の頃だ。
まぁ、両親が離婚したので、父方の縛りが解け、タブーが無くなったお陰である。
早速、知り合いの家に大量の漫画があったので、とりあえず手をつけてみたのだが、最初はどう読んでよいのか戸惑った。
吹き出しを読みながら絵を見て、コマの順番に目線を送るというのも、中々に難しく感じたのを覚えている。
そのうち読み方に慣れてくると、漫画の面白さにどっぷりと浸かり、夢中で読み漁るようになった。

少年時代に読んだ漫画で印象深いのは、横山光輝氏の『三国志』『バビル二世』&『その名は101』、永井豪氏の『デビルマン』『バイオレンスジャック』、石森章太郎氏の『仮面ライダー』『人造人間キカイダー』、そして衝撃を受けた『リュウの道』である。

リュウの道』は、文明崩壊後の荒廃した地球を旅する青年リュウが、原始時代、中世、公害社会、管理社会等の様々な文明とミュータントに出会いながら、他の生物とは違う人類の存在意義を問われる壮大な作品である。
イデア、絵、共に抜きん出た傑作であり、是非多くの人に読んでもらいたい漫画だ。

永井豪氏の怪奇SF短編集も、往年の海外SFドラマにネタが類似しているが、「真夜中の戦士」「鬼-2889年の反乱-」「ススムちゃん大ショック」「くずれる」等、氏の絵柄と残酷描写がマッチした珠玉の作品集である。

小説も好んで乱読したが、読んだ漫画の数は正直数えられない。
購入した物だけでも、読んだ後にビニール袋に戻す癖があるので、母に捨てられていなければ、実家の物置には段ボール詰めで、軽く二千冊は放り込んであるはずだ。

渡米した際に、スナック店で買っていたパルプ雑誌やアメコミも、気がつけば書庫を圧迫する数になっていた。
コミックの時代やジャンルは、かなり複雑で多彩であり、これ自体がアメリカ文化の象徴として、一つの芸術にまで評価が上がっている。
日本では筋骨隆々のヒーローが悪と戦う単純な物語と思われがちだが、実情は全く違い、ほぼ全てのジャンルを網羅しているのに加えて、カラー印刷物が圧倒的に多く、作家は漫画家というよりはアーティスト感覚だ。
最近は、映画でもお馴染みのヒーロー物が、アメコミとして輸入され、ステイツでも流行しているのは事実なのだが、どうかアメコミをそれだけの物だとは思わないで欲しい。
漫画が日本を代表する文化なら、コミックもステイツを代表する文化なのである。


最近の作品も挙げておけば、村枝賢一氏の『RED』『仮面ライダー魂&新〜(続刊中)』、平野耕太氏の『ヘルシング』、佐々木倫子嬢の全作品、手代木史織嬢の『冥王神話ロストキャンパス&外伝(続刊中)』、諫山創氏の『進撃の巨人(続刊中、映画化決定)』、椎橋寛氏の『ぬらりひょんの孫』、辺りがストーリー性と絵柄が良くマッチした良作だと思う。

ストーリーだけ、絵だけ、なら他にも紹介したい人は多いのだけど、私は漫画である以上は、この2つの要素が合っていないとダメだと感じてしまう。
往年の名作のリメイクでは、野口賢氏の『バビル二世ザ・リターナー』が上手く前作をオマージュしつつ、独自の後日談を描いていて好感が持てる。

ベテランで頑張っている漫画家としては、本宮ひろ志氏の『まだ、生きてる・・・』が、男の人生を描き続けた氏の一つの結晶として胸を打つ作品だ。

漫画家も映画監督も、新人時代や短編にこそ個性が良く現れるもので、長期連載になると人気作故に落とし所を見失って迷走してしまう傾向に成りがちだ。
そんな状況でも、自分を見失わずに完結まで大きな破綻もせずに連載を終了できるのが、本当の実力ではないだろうか?

ともあれ、漫画は娯楽という以上の何かを読者に与えてくれる素晴らしい文化なので、これからも新しい漫画家、作品に出会えることを期待して止まない。