深刻さ

最近、ニュースでも取り上げているので、放射能汚染について、もう少しだけ書こうと思う。
知れば知るほど欝になる現状だが、過去の雑記以外に、簡単に何が行われているのか、を記す。

ステイツから派遣されたNPOやボランティアが、日本の放射能汚染を調査しているのは、前にも書いた。
事故後、三ヶ月目ぐらいから始められ、現在も進行中だ。
同時に欧州からも調査団が非公式で来日し、汚染地域の住民の変化や樹皮・落ち葉溜まり・不動物・河川・海洋水質の計測を行なっている。
彼らは、自国の要請で調査をしているので、日本側に報告する義務はない。

極端な危険性をアピールしたいわけでもないので、淡々と範囲を変えながら、黙々とデータを集めている。
計測方法も正しく(地中10cm・地表・腰高1m)サンプルの収集も手順通りに封印し、あるがままを調査する。

それを基にして、放射能汚染マップや人体への影響を纏めるのは、それぞれの国の科学者や医者である。
いわゆる騒動屋の博士やジャーナリズムとは、決定的に違うスタンスで、事実のみを整理し、日本に何が起こりつつあるのかを調べている。

日本は、いま世界中の専門家が注目する、一大実験場になっている。
放射能をどれだけ浴び続けたら身体に影響が出るのか、日常的に汚染地域で生活する人の場合、原発周辺の作業員や樹木、海水に流れ込んだ放射性物質の循環経路、生態系への影響、汚染食品を食べることによる内部被曝、新生児の異常出産率や乳幼児の発癌率(リスクは若いほど高く、進行も早い)、これから十年、二十年と調査は続けられる。

どうして、こんなに熱心なのかと言うと、被曝実験は当然だが禁止されているし、ラットや検体では正確には分からないからだ。
チェルノブイリもスリーマイルも、情報の公開や立ち入りが禁止され、政府の監視の目が緩んだ頃には、多数の実例だけが示された。
研究者が知りたいのは、結論より過程であり、そういう意味で何の法的拘束力も情報規制も受けない日本という場は、望んでも得られなかった最良の環境が揃っている。

事故現場の福島原発周辺は、立ち入り規制が行われているが、実はザル同然で、簡単に侵入できるし、発見されても所持品の没収や罰則を受けずに範囲外に出されるだけだ。
しかも、半径20km程度では、規制の意味は薄く、ステイツでは福島原発周辺50km以内に立ち入らないように独自の勧告を発令している。

こうして、下水処理場の沈殿泥濘、材木加工場のクズ(樹皮やオガクズ)、底魚(海底に生息する魚類・甲殻類・海草類)、の放射能汚染度も調べ、かなり正確に現状を把握している。
こうした場所で外国人を見かけたら、調査員である可能性が高い。

こうして得られたデータは、今後の世界において、放射能という目視出来ない毒と戦うための貴重なサンプルデータとして、各国で活用されていくことだろう。

私は、当初から日本政府や東電の発表は無視して、海外ソースの情報を重点的に集めてきた。
逆に日本からの情報も得たい、という友人からの申し出にも答えてきた。
厭世家の私にとって、日本は誤魔化しを好み、事態の収束どころか被害を広げることに夢中になっているとしか思えない。
消極的な取り組みで後手に周り、真実を知らされないまま、そのうち落ち着くだろう、という根拠のない村社会ぶりを世界中に宣伝しているようなものだ。


ただ、私は行動が伴わないので、本来なら誰かを責める資格は無い。
幾つか予想したシナリオ通りに、この国がダメになり、海外からモルモット呼ばわりされ、数年後には沿岸国への多額の賠償責任が待っている。
不況どころではない、環境の破壊、経済力の低下、病人と老人だらけで若年層が激減する人口比率、先進国基準からの転落、年数が経つほどに日本は苦しい社会へと転がり落ちる。
そして、優秀な人材と大企業は、税金の高騰と日本ブランドの失墜を見て、海外へと出ていくだろう。


私は、自分の病が、暗い予想の原因であったなら、どんなに良いか、と思う。
また、知らなければ楽だったのに、とも思う。
私にも、幼い息子がいるのだから、自分の将来よりも、我が子の明るい未来を予測したい。

今の時点では、明るくなりそうなデータは、何も吐き出されてはいない。