通院日 5 シュークリームと回想と

今日も、シャワーを浴びて病院に行くと、ほとんど待たない内に、呼び出しを受けた。

状態が安定しているので、ジプレキサの投薬は続けることにして、朝のパキシルが半量に変更となった。

理由は、私が治療を始めてから、初めての強い躁状態になったので、自制が利かない状態になる可能性が高いからだ。
何度か経験していれば憂慮することも無いのだが、実際にこの一週間の私は、かなり行動的であり、金銭も動かしている。
気分が軽いのは結構だが、判断力も軽くなっては、元も子もない。
『自重』の文字を常に念頭に置き、ゆっくりと気持ちを鎮めなければならない。

そういえばタバコの本数が増えてるなぁ、と思いながら、バスで駅前に戻ると、生協で買いもらした品を100均ローソンで、補充分のタバコを2箱と、雑誌も購入した。
そして、電車に乗ると、幼稚園の遠足に遭遇し、乗り換えでは高校生の帰宅に巻き込まれた。
普段なら、空いているはずの電車も、とにかく賑やかで、ふらふらになって駅を出る。

幼児に遭遇したせいか、ふと昔の記憶が甦って、停留所と違う方向に歩いていた。
立ち寄ったのは、近所でも知る人ぞ知る洋菓子店。
まだ、妻子が居た頃、知り合いにシュークリームが絶品だ、と聞いて土産に持ち帰った店だ。
その時は、どんな味かな〜、と思いながら風呂から上がると、すでに3個全てが元嫁と息子の胃に収まっていた
好評だったので、その後も何回か土産に買っていたのだが、私が口にしたのは半分だけ(息子に『くれ!』という目で見つめられた)。
そういうわけで、シュークリーム2個とラスクを購入して、家路についた。

薬の仕分けを終え、色々と一段落したので、京ほうじ茶を淹れて、一つ頬張ってみると、ドドッと中のクリームが口に溢れんばかりに入ってくる。
噛んだ圧力で他からも飛び出したので、指についたクリームを舐めながら、どうにか食べ終えた。
一個100円とは思えないほどのボリュームと極上のクリームに感心し、甘い物が苦手な私でも納得できる一品だった。

半分だけ食べた時は、息子の目線が気になって憶えていなかったのだが、なるほどこれは親の手からでも取って食べたいレベルだ。
シューが中のクリームを押さえ込んでいる、という感じ。
もう一つは、食後に頂いたのだが、私が甘いものを同じ日に二度も食べるのは、かなり珍しいことだ。

安心して食べられるのは結構なことだが、息子が居たら、目を輝かせただろうな、と想うと少し寂しい。

次の訪問日に寄るかは分からないが、この味を記憶したからには、いずれまた買うだろう。
そして、また息子を想い出し、甘いシュークリームが、ほんの少しホロ苦くなるに違いない。