生活保護の在り方

何やら、芸人の母親が生活保護を受給していた、とかで騒いでいる。
マンションのローンや共益費・修繕積立金を芸人が毎月払って、母親と祖母は生活保護で暮らしているのが不正受給だということだが・・・。

生活保護は、文字通り何らかの理由で、働いて収入が得られず、生活が困窮している人が、最後の手段として申請するものだ。
国民の権利であり、真っ当に生きてきた人が、進退窮まって国に助力を乞う最終手段である。

マンションをローン中で所有している状態が、資産の有無に当たるのかは判断が曖昧だが、最低家賃金額42,000円と食費・光熱費・雑費で10万円台前半程度の金額ならば、審査の対象には充当しているはずだ。
祖母は寝たきり状態だそうなので、母親が働けずに困窮しているのは理解できる。

次に、近親者に助力が出来るか、又その意志の有無も審査の基準に入る。
この場合は、芸人本人はマンションのローン他を肩代わりして助成しているが、生活費までは渡せない、と言うことだろう。
これも判断としては微妙だが、住む家を失うわけにもいかないだろうから、息子の援助も厳しいという口実にはなる。

あくまで、全ての要因を満たしていれば、の話で、例えば賃貸で最低家賃内の物件に引っ越して、母と祖母が暮らすのならば、芸人の息子は生活費を援助できるので、一部保護の対象として減額はされるが納得はいく。

今回、一番面倒なのは、個人所有のマンションで暮らしている、という点と、芸人の息子が母・祖母の生活費すら捻出できない程度の年収しかないのか、という2点である。

これについて、吉本興業の管理能力と芸人の正確な年収が出れば、説明の材料にはなる。
ただ、一部で報じられているように、生活保護受給のノウハウを吉本興業関係者が斡旋したとなれば、少し雲行きが怪しくなる。
福祉事務所の担当官と所長レベルで、曖昧な要因を好意的に判断し、保護決定をしたのなら、これは再度の見直し審査をするべきだし、役所側も事実関係を発表すべきだ。
本来、一切の資産が無く、又近親者の援助も受けられないのが、生活保護の原則であるので、優遇された支給ではないか、と抗議を受けても当然の結果だ。

芸人と福祉事務所は、充分な説明責任を果たしているようには見受けられず、世間の風当たりも不況のせいもあってか、ことのほか厳しい。
遂には、生活保護制度の見直しや受給者の調査の強化まで、マスコミに啄かれ始めている。

最終的な判断が福祉事務所にある限り、受けたくても受けられない人や受けなくても大丈夫なのに受けている人など、様々な思惑が入り混じって、思わぬ大騒ぎに発展しそうな勢いである。

国が受給条件を厳しくすれば、それだけ保護に係る費用(約3兆円)が減らせるが、それによって浮浪者や自殺者が増えては、何のための福祉か、と批判が起きる。
かといって、このまま見逃せば、無駄な福祉予算が計上され、保護を受けていない人や受けれない人の怒りを買う。

事が、一件の不正受給疑惑から、国全体へと、あっという間に波及した辺りに、今の社会の不安定な情勢が見て取れる。
制度の悪用は糾弾されるべきだが、そのラインを何処で引くのか、今の審査基準に問題は無いのか?という段階での論議が必要だろう。

今の政権に、この問題に取り組む余力があるかは知らないが、矛盾を上げれば、母子家庭扶助はあるのに、父子家庭には厳しい、というのも、十二分に問題だと思うのだが・・・。

とりあえず、それなりにデリケートな問題なので、余り熱くならずに、冷静に全体を見渡した議論を行なって、三方一両損的な解決策を思案して欲しいものだ。

ちなみに、私見を言えば、審査基準に不備が無ければ、受給する権利は国民にはある、とだけ言っておきたい。