外交と経済戦争

日本が、経済大国の座から滑り落ち始め、緩やかに沈下を始めてから十数年。
アジアへの影響力という面でも、中国に遅れをとり始めた。

日本は、アジアの小国に経済援助を続けていたが、国内事情が悪化し始めてから、当然ながら財布の紐を閉めてしまった。
その間に、中国は世界戦略の一環として、太平洋沿岸の国々に積極的な援助を行い、今ではアジア圏の首長の座を狙っている。

ロシアが衰退した現在では、ステイツの最大の仮想敵国は中華民国であり、軍事・経済と互角になりつつある。
十年前なら、中国の戦闘機では日本にすら勝てないレベルだったが、バブル景気に乗って拡張した軍事力は、ロシアを抜き世界第二位と言われる。
軍事技術では劣るものの、総兵力・戦闘機・機動兵器・海上戦力を単純に足し、核を保有している点を考慮すると、中々に手強い国へと成長した。

中華思想は傲慢で未熟な部分を大いに含んでいるが、国民の教育レベルが低いことも相まって、洗脳に使うには最適な思想である。

先進国と呼ばれるためには、安易に軍事力を使うべきではない、という風潮の中で、自由主義中華思想共産主義の旗を掲げた大国の睨み合いが始まったわけだが、日本はコレといった思想がない。
敗戦国の悲しさで、国の根幹を成していた価値観を砕かれ、愛国や団結というと白眼視するような冷めた国になってしまった。
国民の全てが仰ぐ共通の思想が無い、というのは致命的な問題で、自由主義と言いながら共産的で、共産的なようで中華的という良く言えば自由、悪く言えばバラバラなのだ。

軍事力を温存した経済戦略、経済侵攻、経済支配が新しい戦争の形なのは間違いないが、グローバル化が遅れる日本の経済界は、この分野でも勝ち目は薄そうだ。

老練な人材をリストラしたツケが、今の日本経済を苦しめている。
不本意な退社を命じられた優秀な人材が海を渡り、アジア全体の技術力を底上げしてしまったからだ。
云わば、競争相手の他国企業にも、重要な分野には日本人が居るという形で、完全に手の内を見抜かれている。
私が知る限りでも、台湾企業で活躍する日本人技術者は数多くいる。


自分でも、隠居などという気楽な身分で、好き勝手に世界を語るものだと呆れないでもないが、本当の所はもっと深刻で、もう少し整理してから書けばよいものをと反省している。