秋深し

ベランダで、さんまを焼く煙が立ち登り、空と繋がると、何とも言えず柔らかい顔になる。
七輪ではなくてダッチオーブンなのが私流だが、焼ければなんでもいいのである。

料理は、手順を守れば失敗することはなく、正しい知識を持っていれば、尚良い。
巷にごまんといる料理研究家も、情報を整理すれば、対して目新しい事を言っているわけではない。

むしろ、作る側より食べる側の情報の方が、料理をする際の目安になる。
池波正太郎氏の著書に、食に関する本が数冊あるが、それを読むと、美味い食事をするには、心構えが大事だと感じる。
宿泊先の料理店で、2日目も同じ店に行くと、前日とは違う酒肴が出てくるというだけで、うむ、と感じるものが生まれる。
良い店についての氏の筆が心地よく、男として納得できる店で食事をするというのは、非常に大事なのだと教えられる。

ここが良い、と褒められた部分を、自分が調理する際にも加えるだけで、食の満足度は格段に違う。
病気のために外食など無理なので、自炊の中に取り入れることで、一日一食の満足を感じている。

たかが飯、されど飯なのだ。