ネット

まだ、ネット通信がメジャーではなく限られたローカル環境で、恐ろしく高額な費用が掛かっていた頃、通信者同士で騒動になった事がある。
不用意な発言【土建屋ふぜい】が原因だったのだが、パソコン誌上で直接対決にまでなり、口喧嘩もヒートアップすると公共の場にまで発展するのか、と半ば呆れたことがある。

映画では、「ウォーゲーム:1983年公開」が公開され、クラッキングに夢中になった高校生が、戦争シミュレーションを通じて、軍のコンピューターが第三次世界大戦を起こしかけるというSFだ。
オチは、【勝者のないゲームなんて、つまらないものだ】という安直なものだったが、PC通信の黎明期だっただけに、それなりに怖い思いがした。

家庭にマイコン改めパソコンの所有が当たり前になると、通信料も徐々に下がり、ネットアクセスが一般的になる。
最初は、随所でローカル通話が行われていたが、巨大掲示板の登場で、より多くの人間が多種に渡り匿名で発信を行えるようになった。
同時に、顔の見えない気楽さから、暴言・迷言・中傷・罵倒が横行し、犯罪予告まで書き込まれるようになると、法律の改正が検討され、逮捕者が相次ぐ自体になる。
文責を取らない発信者の大量発生は、ネットストーカーなる集団心理を生み出し、現在でも問題になっている。

道具が進化しても、使い方を誤っていると、人間性すら堕する結果になりかねない。

その際たる事件の容疑者が逮捕された。
他人のPCを操作し、犯罪予行を書き込むという卑怯な手段を行いながら、子供のような駄文を警察やマスコミに送るというのは匹夫の極みだ。
犯行に使われた通信手段は、言論の自由が許されず、出処が分かれば命の危険があるような国民が使うべきもので、こんな人間が隠れ蓑として好きに利用して良い類のものではない。

真面目に取り上げる価値もない犯人だが、事件の内容としては、ネットを利用する際の危機管理を意識させてくれた。

便利な道具は、便利であるが故に問題があるものだ。
ネットの世界は、決して無法地帯ではない。
法は、利用者が心に定めるものだ。